ブックカバーから始まる恋
行きつけのBRAで、いつものようにアイリッシュウイスキーをストレートで飲みながら、俺は本を読んでいた。
警察を題材にした、俺の好きなミステリーとハードボイルドが入り混じったもので、俺にとっては面白い本だ。
カウンターはすでにに満席で、隣には始めてみる女性がいた。初めて見る顔だった。
俺はチェイサー替わりのビールのせいで、トイレにたった。当然本は栞を挟んで、閉じ、カウンターにおいて席を立った。
戻ってくると、バーテンダー兼店長の嘉寿夫がお絞りを出してくれた。俺は手を拭きながら、今日は早い時間から混むねと言った。
本に手を伸ばして読みはじめようとしたら「あの〜、この本のブックカバー、珍しいですね。どこの本屋さんの物ですか」と、隣の女性が声をかけてきた。
「これは俺がパソコンで作ったものだよ。しかもエクセルで簡単にね」俺は言った。好きなオールディーズの歌詞と、幾何学的な模様を組合わせたもので、言われてみると結構珍しいかも知れない。なにしろ、俺のオリジナルなのだから、当然他にはない訳だ。
「もしご迷惑でなければ、有償で譲っていただけませんか。なんだかとっても素敵なので」
俺は戸惑った。だって、こんな簡単なものであり、とても人様にお金を頂戴できるようなものだとは、作った俺自身にも思えないからだ。
「いや、そんなに気にいっていただけたのでしたら、各歌詞ごとに五枚程度づつ差し上げますよ。嘉寿夫に渡しておきますから、そうだな、来週の月曜日までには差し上げられると思います。そんなに気にいっていただけて、なんだか光栄ですね」
と俺は彼女の方を向いて言った。
彼女の顔をみて俺は、え!と思った。結構可愛い人だからだった。
俺は日曜に嘉寿夫に会い、ブックカバーを渡した。
そして、水曜日に嘉寿夫のBARに行った。
何と、彼女が来ているではないか。
「カバー、本当にありがとうございました。お礼に今日は私に一杯奢らせてくださいませんか?失礼を承知でお願いします」と、にっこりと微笑んで俺に向かって言う。
「いや、そんな価値はこのカバーには無いから、お気持ちだけいただきます。それより、一緒に飲みましょうよ、その方が楽しい」
俺は、無意識に彼女を誘った。
「はい、お願いします」と、彼女は微笑んで言ってくれた。
その後、何度も嘉寿夫のBARで会うようになり、最近では嘉寿夫のBAR以外でも頻繁に俺たちは会うようになっていた。
気がつけば、嘉寿夫のBARで出会ってから、すでに半年以上が経つ。
なんだか、俺たちは付かず離れずの関係になっている。
でも、俺ははっきり彼女に対して恋愛感情を持っている。
こんど会う時には、はっきり気持ちを告げるつもりだ。自信はある、絶対に・・・・・・。
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